Interview 第9回 沼津深海プリン工房

THE BLUE Spirits インタビュー第9弾は、沼津深海プリン工房・チーフ 佐野綾子さん。
沼津深海プリン工房は、沼津港から程近い場所の深海水族館などがあるエリアに店舗を構え、オープン前から列ができるような人気のお店です。そこでチーフとして、店舗全体を統括している佐野さんに、深海プリンのこと、青いモンブランのこと、そして佐野さんも大好きという青い色のことをお聞きしました。

──御社の歴史をホームページで拝見させていただきまして、お寿司のお店からプリンのお店になったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

佐野さん もともと干物屋さんやお寿司屋さんのお店がたくさんありまして、沼津ならではの、別のものを作ろうと企画していきました。そこで出たアイデアが、日本一深い駿河湾をイメージした青いプリン、深海プリンなんです。

──佐野さんはこちらで、何年ぐらいになりますか?

佐野さん 4年くらいです。お寿司屋さんをやっていた時の店長が、そのままスイーツの店長になったんですね。
私は深海プリンのお店になってから入ったのですが、その店長が、お店に対する想いなどをすごい熱く語ってくれて、それで感化されて。その方と一緒にお仕事をさせていただいて、そこから引き継いで今はやらせていただいています。

──どんな想いを語られていましたか?

佐野さん 沼津港のある駿河湾は、日本一深い湾というところから、港ならではのスイーツを作ろうと深海プリンができて始まったのですが、プリンの味が少しでもイメージと違う仕上がりになると、これはもう全部ダメだから、と一からやり直したり、接客の仕方もここは港だからかしこまるのではなくて、ちょっとラフにしようとか、沼津という場所にあったやり方や、プリンの味にも強いこだわりのもとでやっていました。

──深海プリンの青い色は、どういうイメージがありますか?商品もさまざまな青があるので、青に対する思いがありましたら聞かせてただけますか?

佐野さん やはり深海というところから、青いプリンが作られたのですが、青といっても、薄い青ではなく、なるべく濃い方がいい。 モンブランも、とにかく深海をイメージして「濃い青」を意識して作りました。

──モンブランもすごく濃い青ですものね。

佐野さん そうなんです。「これは青なの?黒なの?」と聞かれたりもしました。

深海モンブラン

──このプリン工房さんは、近くに水族館があるので観光客の方もいらっしゃると思うんですけど、地元のお客様にとってはどんな存在ですか?

佐野さん 地元のお客様もいらっしゃいますが、県外からのお客様の方が多いですね。でも、地元の方でも何回も来てくださいますし、手土産や、郵送でお送りするギフトに選んでいただくことも多くなりました。地元の定番として浸透しつつあります。
この界隈も、最近は少しずつスイーツ系のお店も増えていますが、今まではスイーツを販売しているのが当店だけだったんです。なので、お贈りする物として、干物ではなくて、スイーツをお贈りしたい方たちに選んでいただくことが多くなりました。

──ほかになかったものをはじめたこと、その目の付け所がすごく良かったのでしょうね。
深海プリンは、上が青くて下がプリンですが、深海プリンの開発秘話などありましたら、聞かせていただけませんか?

佐野さん レシピは最初にシェフに作ってもらっていますが、上の部分の青色の濃さだったり、一番上を透明にしたり、そういったアイデアは私たちが考えています。
深海をイメージしているのですが、そのグラデーション加減だったり、見た目だけではなくて、味もバニラビーンズの量だったり、生クリームと牛乳の量だったり、レシピにも相当こだわって作っています。

ゼリーはの青い部分はラムネ味なんです。上の透明の部分がレモンでさっぱりめの味です。かき混ぜると、クリームソーダのような味になって美味しいですよ!

──おいしそうですね!青のグラデーションもとても綺麗ですよね。

佐野さん そうなんです。青いゼリーは少し落とすだけだと、ただの層になってしまうので、綺麗なグラデーションにするには、1回落としたあと、2回目を少し押し込み気味にして、青色が持ち上がって白が沈んで、そこで綺麗なグラデーションになるように工夫しています。

──青いモンブランはいつから販売されているのですか?

佐野さん モンブランはわりと最近で、展開し始めたのは3、4年くらい前です。

──モンブランの開発は大変でしたか?

佐野さん 試作段階から、栗にするのか白あんにするのか、生クリームの量はどれくらいにするのか、メンゲのサイズなどをみんなで話し合って、試作して、実際に食べてみて。それを繰り返して、みんなが納得する美味しいものに仕上げていきます。
モンブランもシェフがある程度のレシピを伝授してくれた上で、それをみんなで作っていくのですが、みんながそのまま簡単に作れるかといったらそんなことはないので、そこまでのクオリティになるまでの練習も大変だったですね。季節によって、室内の温度などでも味や硬さが変わってしまうので、その時によって、うまくやり方を変えないといつも通りの味が出ないことがあるので、そういうところでもいろいろと苦労しました。

──モンブランの美味しいポイントは何でしょうか?

佐野さん 美味しいポイントは、やはり栗の風味がけっこう強く出ているところですね。それでいて、1ミリの細さであるので、口当たりがすごい滑らかで、ふわっとしていて、香りも高いので。栗の味をしっかりと感じながら食べていただけます。

──そういう細さや風味にもこだわったって作られたのですね。

佐野さん そうです、香りもですし、選ぶ栗もとてもこだわりましたね。

──青いモンブランはお客様の反応はどいうでしたか?

佐野さん 青色は美味しく感じられる色ではないので、最初、お客様からは「青色しかないの?」などのリアクションもあったのですが、観光に来られたお客様は、興味本位で反応してくださって、食べてみると「栗の味がすごく美味しいね!」と言っていただけて。みなさんから良い反応をいただいています。

モンブランはできたてが一番おいしいので、作ってすぐに食べていただきたいという想いがあるので、その場で食べていただいて、テイクアウトもやってないんです。

──このモンブランもそうですが、常に青い新商品を開発しようとか、みなさんでアンテナを張って考えているのですか?

佐野さん はい。この季節だから、こういう青い商品を作ってみようと企画して、そこから試行錯誤して商品化してうまくいけばいいのですが、もちろんうまくいかないものもあって、ボツになることの方が多かったりもします。
新商品を作る時は、早めに準備していくというよりも、その時期になったら、これやりたい!と企画して、パッとやるんですよ。そこから急いで商品化していきます。なので、いつもツメツメのタイムスケジュールなんです。

──そういう時も、佐野さんがアイデアを出されるのですか?

佐野さん そうですね。モンブランは、前の店長のアイディアで、やっぱりいきなりこれをやろう!みたいな感じで始まったのですが、そういうスピード感ある商品作りは、私も乗り移ったような感じですね(笑)。前の店長とは今でもやりとりをしていて、相談に乗ってもらっています。

──前の店長さんはどんな方でしたか?

佐野さん 年上なのですが、最初から気さくに話しかけてくださって、とても素敵な方です。
入った当初、私は少し尖りすぎていて、ちょっとクールビューティーなところがあったので、周りのパートさんたちと馴染めなかったんです。ツンケンしすぎな感じで、挨拶が冷たいと言われたり。でも本当はあがり症で、緊張していて、そういうことがなかなか理解してもらえなくて。ですが、その店長がいつも話しかけてくれて、少しずつ私という本来の自分を出させてくれたんです。この子はこんなに面白いし、いい子だよ、という風に言ってくださって。そしたらパートさんたちの見る目も変わって、最終的にはみんなで仲良くさせてもらいました。自分を社交的にしてくれたのが、その店長なんです。

──その方との出会いが、佐野さんの人生を変えてくれたのですね。

佐野さん 本当にそうだと思います。世界はもっと広いから、と言ってくださり、さまざまなことを教えてくれました。いろんな人と出会って、全部を経験にしなさい、と。本当に心が海のように広い方で、空のように包み込んでくれる方でしたね。

部下から上の人に何か意見があっても、言いにくい時がありますよね。でも、その店長には、きちんと自分の意見を言うと、それをしっかり受け止めて、一緒に考えてくれて、そのアイデアが良ければ、本当にそのまま採用してくれるんです。そういう方なので、ずっとついていきたくなる人でしたね。
そんなご恩もあるので、その店長の想いが詰まったこのお店を、もっともっと広げて、みんなに知っていただけたらいいな、という気持ちが強くあります。

──佐野さんは、青色はお好きですか?

佐野さん 青はもともと大好きな色なんです!

──佐野さんにとっての青とは何でしょうか?

佐野さん 青い色は、落ち着く色、と思っています。私は昔、ちょっと熱くなりやすい自分がいたので、落ち着くためにあえて青色を身に着けていた時期があったんです。でも、青って、空とか海とか、広大な広い場所にありますよね。沼津の海も遠くを見ると深い青ですけど、近くで見ると、色が変わったりしますよね。そういう青がまた幻想的で素敵だなと思っています。

私には子どもいるのですが、子どもの名前もそういう青色にちなんで、紺碧の碧で、そうは読まないんですけど「ひかる」とつけたんです。青の語源が光るというのを知って。なので、子供の名前に「碧」という漢字を使ったくらい、青色は私も大好きです。車も青が好きなので、青いジムニーに乗ってるんです。

──青が好きになったのは、いつ頃からでしたか?

佐野さん 小学生の終わりくらいから、青色が魅力的に見えてしまって、自然と青色を選ぶようになっていましたね。ご縁があるのか、誕生月が9月なので、青いサファイアなので、私の中で青色が運命なのかなと思って。しかも、子どもが3月でアクアマリンなんですよ。青色にご縁がありすぎちゃって(笑)

昔から、自分自身が女の子らしい人間とは思ってなかったので、だったらなおさらピンクは私じゃないって、昔から思っていましたね。
学生の時はソフトボール部で、青いユニフォームを着ていました。なので、自然と青が寄ってきてましたね(笑)

──なるほどね。では深海プリン工房にいらっしゃるのも運命みたいですね。制服も紺色ですしね。

佐野さん そうなんです。運命なのかなって思います。ここに入って、当時の店長の思い入れとか、そういう気持ちを聞いて、それを受け継いで今もやっていますので、これからもずっとここでやっていきたいと思っています。

──先ほど、落ち着くために青色を身に着けていたともおっしゃっていましたが、昔から情熱的な感じだったのですか?

佐野さん 情熱的というよりも、むしろプレッシャーというか、あがり性なので、落ち着きがなくて。
なので、気持ちを落ち着かせるために、本当に自然と青色を選んでいたような気がします。
本来はわんぱくで、やんちゃで、いたずらっ子なんです。小学校の時は黄色だったりとか、オレンジとか、そういう色も好きだったんですけど、自然と落ち着かなきゃ、と思うようになって、少しずつ大人になるにつれて、落ち着いた青い色を探し始めていたんです。

──青は沈静効果がありますからね。

佐野さん そうなんです。調べれば調べるほど、青って素敵な色だなぁって思います。奥ゆかしいですよね。こんなに青色の話ができるのは初めてです。周りはあんまり理解しないので。

──私もこんなに青色が好きな方と出会えて、すごく嬉しいです。

佐野さん 今でもパーティードレスや、結婚式に着ていく服は、青を選んでしまいます。青はかっこいいですよね。

──最後に、プリン工房さんの今後の展開やPRしたいことがありましたら、お話しいただけますか?

佐野さん 私たちが大切にしていることは、基本的には地元のものを使う、ということが前提としてあります。
そして、今後はいろいなところとコラボをしていきたいですね。学生さんとのコラボや、地元の企業さんとのコラボを広げて、もっともっと多くの人たちに知っていただきたいと思います。それに伴って沼津のいいところをより多くの方々に知っていいただけたらいいなと思っています。

──佐野さんにとって、沼津のいいところを教えていただけますか?

佐野さん 私は生まれも育ちも沼津なのですが、沼津はみなさんが思っている、みかんや干物、お茶などはもちろんありますけど、海産物を食べながら、富士山が見れるんです!自然が溢れていて海産物も美味しい。沼津も、戸田(へだ)の方は、海が透き通っていて、すごい綺麗なんです。
私はこの場所が大好きなんです。ここに生まれて、住んでいて、よかったなと思っています。
そんな良さを多くの人に知ってもらいたいですし、そういう活動を今後もやっていきたいと思っています。

楽しいお話をありがとうございました!

沼津深海プリン工房
チーフ 佐野 綾子
https://numazu-pudding.com/

営業時間:10:00~17:30
所在地:〒410-0845 静岡県沼津市千本港町97
アクセス
・お車でお越しの方:東名高速道路 愛鷹ICより、20分
・電車でお越しの方:東海道本線「沼津駅」より、徒歩30分、タクシー10分
・バスでお越しの方:沼津駅発→千本港町で下車、徒歩3分
定休日:年中無休
電 話:055-962-9010
駐車場:当店は専用駐車場はございません。
お車でお越しの方は、店舗道向かいにある有料駐車場(22台)もしくは、店舗より南に300m海岸沿いにあります有料立体駐車場ぬまづみなとパーキング(452台)をご利用ください。