THE BLUE Spirits インタビュー第10弾は、絵本作家・画家・詩人の葉祥明さん。
田園調布にある資料室へ訪ねた時、先生がCDジャケットを手掛けたという、ウォン・ウィンツァン「MOON TALK」というCDを見せてくれました。そのウォン・ウィンツァンの最新作のアルバムタイトルが「沙羅の音 The Sound of Sara」だというのです。
それもご縁ですね、というお話から始まり、一番好きな色は青だそう。そんな青について、たっぷりとお話をお伺いしました。
──今日はぜひブルーのお話をいろいろ聞かせてくださいね。よろしくお願いします。
葉祥明さん のっけからですけどね。一番好きな色は何ですか?とよく聞かれるですが「僕の一番好きな色はブルーです」と。一番好きな色はブルーなんです。
それでね、ウォン・ウィンツァンいう知り合いのピアニストがいるのね。彼の一番最近のCDのタイトルが「沙羅の音」なの。Satowa Musicから出ているんだけどね。ぜひ聴いてみてください。
ヒーリングミュージックなんだけど、すごい深い。沙羅の音。それもご縁ですね。
それでね、僕の絵を表紙に使ったジャケットが「MOON TALK」というCD。今日もね、ブルーという不思議なテーマでのインタビューだなぁとは思ってるんですよ。
──まず最初に、先生の幼少期はどんなお子さんでいらっしゃっいましたか? 小さい頃、何に影響を受けて、どんな原体験などがありましたか?
葉祥明さん 僕は昭和21年、第2次世界大戦の終戦記念日の次の年に生まれたの。21年だから、団塊の世代のちょっと前だね。僕の幼少時代は、戦後間もない頃で、全体が灰色だったね。戦争の名残があちこちにあって。
そういう時に、僕の実家は熊本でレストランをやっていたんだけど、進駐軍や米軍が来ていたので、お店にはSEARSのカタログとか、分厚いVOGUEとか、そういう洋雑誌がけっこう置いてあったんですね。それがきれいなんですよ。しかも紙のいい匂いがしてね。そして全ページ、カラーグラビア。
そのあと、カラフルなアニメーションのディズニー映画が来た。僕の原体験はアメリカ文化と言ってもいいよね。それが日本に入ってきてすごく影響を受けています。カタログには、自動車からブーツから化粧品まで、何でも載っていて。そういう本が置いてあったから、ビジュアルのきれいな色や、ディズニーのパステルカラーとか。僕はビジュアルの感覚があるから、アメリカの色彩に洗礼を受けたんだよね。
それが僕の子供時代で、僕自身は学校で勉強というよりも、空に関心があってね。空はブルーだよね。いつでも空を見てたね。小学校、中学校、高校、大学になってもずっと空。教室で黒板よりも空を見てましたね。一番後ろに座った方が空が見えるから。そういう子供時代を過ごしたんです。だから、最初から僕のテーマは色彩だね。父も母も兄弟も、みんなきれいな色が好きで、家の中もそういうものがたくさんあった。
──そんな環境の中で、先生が絵を描くようになったのは、いくつぐらいの時だったのでしょうか?
何かきっかけはあったのですか?
葉祥明さん 物心ついた時から僕は描いてますよ。絵は呼吸するようなぐらいで、特別なものではないのね。描くのは、しゃべる、走る、食べる、というのと一緒。
それで、絵画に目覚めたのは、ちょっと余談ですけれども、小学校時代にブリヂストンミュージアムの美術展に行って、教科書や身の回りで見るものとは違う絵を美術館で見て、興味あるんだけど、絵描きになるとは思わなかった。
それでいよいよ本題。大学を出たら、自由に生きられると思ってたのね。僕は「自由に生きる」というのが僕の一番の目的なの。当時は自由という言葉も知らないんだけどね。その時、自分に何ができるか、何をして生きていくかを考えた。みんな就職していたけど、僕は就職して給料をもらって生活するというより、自由に生きたいのが第一だったので。その自由を確保するための経済だから。
その時に自分が何ができるのか。僕は絵が描けるから、絵でやっていこう、と思って、最初から芸術的な絵描きではなく、コマーシャルアートであるイラストレーターになって、この世界で生きていこうと。それが、僕の絵の入り口までの話。
だけど、おっしゃられた本当の真意は、絵画の話ではないかと思うんですよ。挿絵画家としてずっとやってきたけれども、葉祥明、どうしたい。そう考えるとやっぱり絵描きになって思い切り描きたい。それが出発点で、40代後半から50才前後。
でも好きな絵を描くというのは苦労が多いんですよ。頼まれもしないのに、自分の中から湧き出てくる絵を描きたいというのがあるわけなんです。絵描きの世界の本質のところ。
──ブルーの絵は最初から描いていましたか?
葉祥明さん ブルーは、イラストレーターの時も好きだったし、水彩画を描いてたけど、油絵のブルーの絵の具を揃えたのね。スカイブルー、水色や空色、それからコバルトブルー、プルシアンブルー、濃紺。濃紺よりも濃い色でインディゴブルー。群青みたいなブルーね。ブルーと一言で言うけど、今言ったようにいろんな色があるわけです。
地球上で一番、人間がわかる色は何ですか?と質問したら、ブルーなんですよ。青空、海の水、これが地球で一番多い色というのを人間が感じるんだろう、ということが一つ根底にあります。
僕が描く空はね、本当の空みたいなんですよ。自分で言うのもなんだけど。みんなが空というと、1色で描くでしょ。でも僕の空はどんどんグラデーションで、絵を見ればわかるけれども、濃い色から薄い色に、単に濃い薄いじゃないんですよ。ちょっとディテールに入るけれども、地面に近くなればなるほど、色が薄いだけじゃだめなの。地面が温められるでしょう。あったかいというか、熱というか、これが波長だよね。黄色みがかかってくるの。途中から。単純に白を入れれば薄くなるということではなくて、黄色が入ってくる。これがね、秘密なんですよ。みんなそれを知らないので。ただ薄くブルーで描いちゃうから。
僕の絵は本当に空なの。だから風が吹いてるとか、空気感が透明な感じがあるの。それはグラデーションを自分なりに感覚で描いていて。
全部、波長なんだよね。ブルーの波長。漆黒の宇宙から、地面の下に熱を感じるような。
宇宙の大気、そして色、太陽との関係性の色。虹のベクトルは7色で、赤の外が赤外線、青の外は紫外線。という風に。
印象派の人たちもそうだったけど、僕はある意味、色で世界を見てる。それを印象派の人たちが教えてくれた。それまで古典的な絵は、色は関係なく、渋く描いてたんだけど、印象派の最初の人たちが、きれいな空をそのまま描きはじめてから、それをもっとも推し進めたのが、モネとターナーだね。
単にきれいだからというのを超えて、もっと本質。色彩と光の本質で描く。でもそこを追求した人は、そのあとはいなくて、抽象画の方へいっちゃったんだよね。モネとターナーが追求したその先に、絵画における冒険がなくなった。途切れているんだよね、100年。それを僕は復活できないかなと思っているわけです。
──色彩での青は、先生にとってどのような意味を持ちますか?
葉祥明さん 青い花や、青いものは、世の中に少ないんだよね。青いというよりも、青い波長なのね。波長というのは、エネルギーであって、光であって。要するに何らかのエネルギーなの。
だから、あなたは今、青を着ているでしょう。この青の持ってる波長、それも少しずつ色が違うけれども、その波長を発散している、あるいは身につけているわけです。それがピンと来る人と、ピンと来ない人がいるの。
色調が整っているとか、モノトーンとか、ハイトーン、つまり調子ね。それからフランス語ではバルール、色が持ってるか価値というか、それも波長なの。
ですから、波長を整えるというのはフランス語でシック。だから映画でも、昔のヨーロッパやアメリカの映画は心地いいんですよ。乱れがないから。色彩の感覚がいいのね。
だけど、今はもう乱れに乱れて、何でもありなの。混乱、複雑、落ち着かない、安らがない。要するに色が時代まで現す。色彩がカラフルというのは、波長が乱れてるの。でもその乱れが心地いい人もいるしね。そんな時代なんですよ。
今、そんな時代の中で、あなたはブルーで統一してるでしょう。だけどブルーだけじゃだめなの。ブルーは少しずつ違ってこそ、すごく感じるわけ。
すべて同じコバルトブルーだけにしたら消えちゃうよね。少しずつ違う色が入って、すごく総合で繊細な波長が、アルファ波に変化するわけだよ。要するに繊細な波長なの。だから小川の水の流れとか、滝の流れでは小さくなってイオン化するけれども、アルファ波とかって言うでしょ。あれは繊細な音、波しぶきが心地いいわけだね。
僕の絵は、ある意味、アルファ波が出ている。だから僕の美術館に行って、絵が飾ってるところに行って、しばらく居ると、アルファ波、波長というエネルギー、色彩によるエネルギーが、その場を癒すんです。
この世にあるものは全てエネルギーであると言ったのはアインシュタイン。すべて原子でできていて、エネルギーだって言ったのは、物理学者なの。確かにその通り。
要するにきれいな色ね、青が好きです、というのは、すごく表面の話。その色の持っている要素を好ましく思っている人の性格とか人間性、それを青の持っている力までは至ってないの。表面でしゃべってるだけだから。
だけど僕は、今日は青の話だけど、本当に深いんだよ。力があるんだよ。ピンクはどうですか?赤は強烈だよね。ピンクはあったかくて優しくて柔らかいの。人間の赤ちゃんの肌もそうだけど。
だから、ミサイルとか戦車をピンクに塗ってごらん。もう戦争できないのね。兵隊の色がピンクだったら。ピンクのヘルメットはウーマンリブでかぶってたけどね、70年頃。
要するに色の持つ力というのは、みんな単なる話題で言っているけれども、本質ではものすごい力があるということを今日は言いたい。
特にブルーとおっしゃっているのが、現代のブルーを、これを理論でいうとね、秩序とか、落ち着きとか、平安とか、安らぎとか、現代で失われているものに対して、これが普通なんだということを主張している人たちという感じを受けている。調子を整える。もっと落ち着け、クールダウン。ブルーは必要とされているんです。
──この本は、本当にブルーが美しいのと、言葉が素敵ですよね。先生の言葉は、こう内側からも湧き出ていらっしゃるのでしょうか?
葉祥明さん インスピレーション、詩の言葉がやってくるのね。
いろんなことを考えているとね、平和とか愛とか死と、ホロコーストとか、人々の悩みとかね、そういうのをいろいろと考えていると、それが言葉になって、それに対応した言葉が出てくるわけです。
人は
大いなるもの
こよなく美しいもの
想像を絶するものを
前にしたとき
永遠を垣間見る
永遠とか完全とか無限というのが、僕のテーマなの。
そういうものも色彩で、これから描く絵も表現しようと思っているけれども、人間の持ってる生理機能、概念、疑問という形も何もないものも絵画で表現でできるわけ。
絵画の表現は色彩の集積だからね。人の心や精神に影響を与える。要するに色と人間の感覚、生理機能との関係、社会との関係、全部つながっているってことを今日はお伝えしたいし、あなたもそれを感じているから、こういう活動をやっているのではないかなと思います。
世界は色彩に満ち溢れて、千変万化。見飽きないんですよね。それは私が小さい頃から、今に至るまで、ずっと色彩に魅せられている。
──その中でも青なんですね。
葉祥明さん そうだね。それは僕の気質がそうなんだよね。安らぎたい。静けさとか。
──先生の絵には、そういう澄んだ静けさのようなものがありますよね。
葉祥明さん クール、クリア、シャープ。要するにセレニテという言葉があるんです。清らかな澄んだ、みたいな意味。(セレニテ(sérénité)はフランス語で「癒し」「静かな」「平穏」「公平」などの意味があります)
それはね、苦悩は暗いでしょう。谷間、苦しみ。それがふぁーっと弾けるのね、究極へいくと。死ぬか生きるか。極限まで行くと、ふぁーっとこのように生まれ変わるのね。セレニテ。苦悩の果ての光のような。
今、地球上は、時代は、どんどん暗くなっていって、ダーク、鬼滅の刃のようになっていってる。
心を病む人もいる。スーパーセンシティブ。僕よりももっとスーパーセンシティブな人は生きていられない。
要するに繊細な人たちが生きづらい世界になっていってる。それはやっぱり何とかしなきゃと思うんでしょう?あなたは。
──そうですね。
葉祥明さん だから繊細な人たちを救わなきゃいけない。守らなきゃいけない。シェルターが必要だよね。ブルーはシェルターになるんじゃないかと思いますね。
僕の絵は繊細なの。簡単という表現をする人もいるけれども、実はものすごい繊細ですよ。
──繊細でないと描けない世界ですよね。
葉祥明さん ここにね、人や動物がいるのは、見る人にとっての僕の優しさなの。愛なの。ほんとうは、これはなくてもいいのね。なくて、満足してるの、僕は。
そこにある青色にものすごいことを感じたり、繊細さを感じたり。
僕はね、印象派の発展形を描いているの。
僕はこれをベースと言っているんだけれども、ベースが命なの。ベースは、空間、世界の色。それができれば、あとは何を描いてもいいと思っているくらいで、90%完成なの。そこに月を描いてもいいいし、家を描いてもいい。
絵は、世界がそこになければいけない。だから皆さんは、エッセンスとしてブルーを取り上げているけれども、僕はそれを絵として、世界として表す。美しい「美」としてのブルーの世界。海が魅力的なのはやっぱりブルーの世界だから。
海の下も、海面からどんどんどんどん濃くなって、それで100メートルぐらい行くと、もうほとんど暗くなくなって、数100メートルでもう真っ暗。数千メートルだと闇だよね。上は宇宙へ行くと黒。この間に、我々は生きているわけですよ。
だから地球物理学も関係している。ブルーを通して繋がっているの。ブルーのこのグラデーションというのは、熱も含めて、重力も含めて。地球の中はマグマですよ。地球の中に太陽を含んでるんだよね。万有引力とか空気中の光とか熱とか、太陽の色。
それで色を分光器でやると、温度が出たり波長が出たりするんだけど、数値でしかない。みんな科学の世界だけの知識やデータでしかなくて、実感してない。サイエンス的な世界の見方を、絵描きとして僕はそれを見ているわけ。
「地球は青かった」・・・人類にとっての、もっともすごい言葉だよね。これを実感しなきゃいけないんだけど、みんな実感できてない。宇宙に対してもそうだし、僕は科学的な見方によって実感して、それを色と形で美的に見る。
ギリシャ哲学の世界では、真善美と言った。真実なるもの、善なるもの、美なるもの。その美なるものを僕は専門にゲートに入って世界を把握していってるわけです。
善なるものは、優しさや思いやりだし、敬虔な心。それから真実なるものというのはやっぱりこれは何だろう、っていうサイエンスも、哲学もそうだし。だから、美から入って、善と真も合わせて、真善美という、本当は一つ。
地球も本当は一つ。それを人類が実感できてないんだよね。
──先生はいつ実感されたんですか?
葉祥明さん 子供の時からだよね。5、6歳の頃に、野原や空き地があちこちにあった。空があって、虫がいて、草木が季節によって移り変わっていく。それを見たら、地球が僕の学校で、学びの場所。知らなかったことを知るという喜びがあった。実践哲学の始まりだよね。
だから僕には学校は必要なくて、図書館や本屋さんがあればよかった。そこでみんな学べるから。知るべきこと、大切なことは、知ってるかどうか、答えられるかどうかじゃなくて、感じることなんです。
これはなんだろう? わぁ〜すごい!そう感じるセンスが大切なんですよ。「センスオブワンダー」という本もあるけど、僕は小さい頃から、センスオブワンダーをずっと維持してこの歳まで生きてきた。いまだに、びっくりすることだらけだよね、毎日毎日が。おぉ〜とか、わぁ〜とか。
──先生はどんなことにびっくりしますか?
葉祥明さん それはもう、色と形に心惹かれる。動くものにも惹かれる。特に色と形だよね。その構成、コンポジション、それからバランス。それから嬉しいとか、心地いいとか、要するに感覚、センスですね。
それが食べものであっても、おいしいものを食べたら「わぁ、おいしい〜」という味覚、聴覚、視覚、嗅覚、アロマ、それから触覚。子供の頃の僕も、今の僕もずっと、全身センサー。この肉体、僕らの人体は凄いセンサーなんですね。
──先生が絵を通して、今一番伝えたいメッセージはなんですか?
葉祥明さん 平和とか、愛とかあるけどね。これからは、我々は一体何者で、どこから来て、どこへ行くのか?
ゴーギャンがつけたタイトルだけどね。要するに人間存在は何なんだろうというところ。人間って何なんだ。私って何なんだ。
どこからやってきて、このあと死んだらどこへ行くのか。生まれる前と、死んだあと、そういうものを僕が描くと。
どこから来て、どこへ行くのか。どこというのは場所だよね。空間だよね。世界だよね。それを描けそうなんですよ。
そして、そこに何かの存在が、私は何者です、私は何なんだという、この存在というのはこれなんだよというイメージがあるわけ。
要するに光なんですよ。光のエネルギー分子を持った、個性を持った「光」なんです。人魂(ひとだま)と言ったりするけれど。
僕は人類の何であるかを描く。その色が何かといったら、この次元はね、色とはいえない世界なの。基本的に、宇宙に星があって、背景が濃紺、黒い世界。暗い世界。それがあって、光なの。光だけだったら、光はわからないでしょう。暗くならないと光がわからない。
夜になったらニューヨークとか香港とかも綺麗でしょう。100万ドルの夜景。人間存在も実はアナロジー。似ているんですよ。だから人間存在を、僕はすでにそういう目で見ていて、光で見ている。光の粒で見ている。光の波長の違いで微妙に違うし、変化もそこに一瞬一瞬ある。僕は魂を見るって言ってたけど、実は光なんだよね。
それで僕も光。波長だから振動しているから、これは共感すると同調する。だから今、あなたはお仕事だし、青をテーマとして追求してやってる人だから、本来のあなたの波長ではないよ。仕事の波長はどうしてもあるよ。ただ、その仕事がブルーだから、他の人の仕事とは違うけどね。だから完全に同調は無理なのね。だけど、仕事そっちのけになったら、もう一体化する。波長が同調して。
大切なのは、我々はどこにも属さない、同調しない、客観的に見て、自分の波長を守って、客観的に物事を見る。
だから、物事を光と言ったけど、波長で見るという表現もできるし、色で見るというのもエネルギー体、エネルギーのあり方で見るというのもそう。見る、聞く、話すこと。センサーを駆使するということが大切なんだよね。
人間の本質は、未知のものに対するセンスオブワンダーがインスピレーションで発展するわけ。
──先生は、どんな世界になっていたらいいと思いますか?
葉祥明さん いいかどうかは僕の価値観だからはっきり言えないけれど、でも普通に言えることは「自然に返る」ということだよね。自然とは、自ず(おのず)と然る(しかる)。大自然。迷ったら、悩んだら、わからなくなったら、自然に問えと。詩にもかいたけれど。
自然を見ていると、自然のあるがまま。それは雨が降ったり、風が吹いたり、嵐になったり、山火事もあるけれども、自然は滔々と何1000年、何億年、生きている。ゆっくりゆっくり変化していく。
だからまず自然に生きる。自然に身を任せる。そして自然の中に太陽、月、星、宇宙、空、青空、海、全部が入って、森羅万象。
そして、もっと人間自身の持っている可能性を引き出す、活かす方向へ行くのがいいんじゃないかなと僕は思う。それには、大自然を取り戻す。自然を壊しては駄目なんです。
だから自然ということをキーワードに。ヘンリーデイヴィッドソローはウィルダネス、野生、あとは豊かさ。そこに崇高な意識か何かが働いているんだよね。
ジャンジャック・ルソーは自然に返れと言った。人が不幸せなのは、その人がその人らしくいられないからだという封建時代の最後の終わりから言っているわけだ。
ルソーは自然に返れ。ソローは野生のこと。物事を深くDEPP THINKINGしたら、自然があること。そうすると、自然とどう接するか、ということでいうと、芸術が出てくるわけだ。
音楽でも絵画でも、舞踊、作家。人間存在というエネルギー意識は、この地球上でいわば讃えることが一番いいんだよ、ということだよね。
──先生が今の活動を通じて広めたいことはありますか?
葉祥明さん さっきも言ったように、これからはということに関して言うと、僕は我々人間は一体何なんだ、どこから来てどこへ行くのか、世界はどうなっているかということを、絵画で表現して、あぁそうかとみんなが納得するようなものを描いていきたい。
アインシュタインがやりたかったことは、原子物理学を越えて大統一理論を最後にやりたかった。大統一理論。すべてを説明できる理論。その大統一理論のすべての説明は、僕の絵を見れば分かる。アインシュタインもこれ見て、ああそうかとすべてが分かる。そういうものを描いていきたい。
──最後に、ブルーメディアを読んでいる方々にメッセージをお願いします。
葉祥明さん 自然が最後の拠り所だと言ったのと同じで、僕は青がやっぱり拠り所だよね。それが最初に言ったように、地球で一番多く人間が感じる色は何ですか?と言ったら「青」だから。
その青が失われる、地球上が核汚染されて放射能で汚染されて、戦争が起こったら、どうなるのか?
茶色になる。結局、月や、他の火星みたいになっちゃうでしょう。自然が失われると。
だから、青い地球、宇宙の漆黒の中で、こよなく美しい青。それですよ、僕のイメージは。
国連の旗もそうだけど、ブルーの空、大気も水も、空も海もブルー。究極は地球だよ。地球があって、初めて我々がここにいることができるんだよね。この美しい地球を大切にしてほしいと思いますね。
私たちはその青い地球に生かされている。
今日はいろいろなブルーのお話をありがとうございました。
葉祥明(ようしょうめい)
絵本作家・画家・詩人
https://www.yohshomei.com/
1946年熊本市生まれ。1973年創作絵本『ぼくのべんちにしろいとり』でデビューし、1980年代のメルヘンブームの一翼を担う。1990年、創作絵本『かぜとひょう』でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞受賞。1991年「北鎌倉葉祥明美術館」、2002年「葉祥明阿蘇高原絵本美術館」を開館。絵本『地雷ではなく花をください』、詩画集『しあわせの小径』など著作多数。2023年に画業50年を迎えた。
『DARK BLUE そして、光へ 』
葉 祥明(著)
出版社:日本標準
ISBN-13:978-482080732
パステル調の色彩で描く穏やかな風景画が特徴の葉祥明作品。暖かく柔らかい印象の作品は観る者を和ませ、デビューから約50年間たくさんの癒しを発信してきました。また同時に、真理を探究する奥深い思想を内に秘め、時に表現しています。その中でも深い青で描かれた世界は葉祥明の精神を表しているとも言えます。
「大切にするんだよ、この青い星を。すべての命を」をコンセプトに、地球と宇宙を構成するさまざまな深いBLUEの世界。その美しさを讃え、DARK BLUEから明け方に向かって光が差してくるような、祈りとなぐさめ、生きることへの希望を一冊の本にしました。
画業50周年を記念し『DARK BLUE そして、光へ』掲載作品を集め、葉祥明が描く深い世界のメッセージをお届けします。
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