「海洋散骨」は選択肢のひとつ。
“つながり、選択肢、思いやり”のコンセプトを掲げて事業を展開されている、ブルーオーシャンセレモニーの活動をご紹介します。
取材・撮影:sara kimoto
THE BLUE Spirits インタビュー第4弾は、株式会社ハウスボートクラブ・代表取締役社長 赤羽真聡さん。
2007年の創業以来、海洋散骨事業「ブルーオーシャンセレモニー」を主軸とし、「大切な人とのつながりを大事にする社会を目指す」をビジョンに掲げて海洋散骨のフロントランナーとして成長を続け、海洋散骨のほかにもさまざまな事業を立ち上げ、展開されています。
楽天時代のクリムゾンレッドから、ブルーオーシャンセレモニーの青へ。そこにまつわるさまざまなお話をお伺いしました。
──赤羽社長は、幼少期はどんなお子さんでしたか?
赤羽社長 小学校1年から野球からずっと野球をやっていたので、野球少年でしたね。365日、野球をやっていて、小学校の時は野球で休んだことは一度もないです。だからお盆休みでも誰かと野球をやっていましたし、中学校、高校時代もずっと野球しかやってなかったですね(笑)
──そういう野球少年から新卒で当時の楽天に入社されましたが、なぜ楽天だったのでしょうか?
赤羽社長 就職活動をしていた時、ちょうど楽天イーグルスがプロ野球に参入するというところだったんですね。野球をやっていたので、できれば球団で仕事をしたいという思いがあり、楽天が参入するタイミングで、新しい会社だとイノベーションを起こすようなことをやっていくので、そういう会社に入った方がいい、というアドバイスをいただいて、楽天に入りました。
──楽天では、企業様に対しての新卒採用コンサルティングや、さまざまな新規サービスの立ち上げをされたのち、鎌倉新書に移られますが、鎌倉新書は楽天とはまったく異なり、終活に関わる業界です。なぜそちらへ移られたのでしょうか?
赤羽社長 楽天時代にすごく面倒を見ていただいてお世話になった尊敬する経営者の方が鎌倉新書の社長になったんです。その時に、今こういうプロジェクトをやろうとしているからぜひ来てほしい、というお話をいただきました。
私はご縁をすごく大事にしたいという想いがあるので、その方から言われたらもう行くしかないなと。その時にいた仙台から、すぐに東京に戻ってきて、そちらへ行くことになりました。
──楽天から終活の業界へ行くというのは、ご自身の中で何か思いはありましたか?
赤羽社長 どの業界であろうと、私の仕事に対してのスタンスは、ご縁を大切にして、世の中にどういう風に役に立てるか、必要とされるところで最大のパフォーマンスを出す、という考え方なんです。お世話になった方からお声がかかり、それがたまたま終活の業界だったということです。
──その後、鎌倉新書からの出向を経て、ハウスボートクラブの社長に就任されますが、その経緯をお聞かせいただけますか?
赤羽社長 2018年にハウスボートクラブが鎌倉新書のグループ入りをし、その半年後ぐらいに私は取締役としてこちらに出向してきました。着任後は創業者(現会長)の村田ますみさんと、二人三脚で事業再編をいろいろしていました。
出向してきて1年経った頃にコロナ禍になり、日本では初期の感染経路が船だったこともあって、3ヶ月ぐらいは本当に仕事がない状態でしたね。その経験を二人で乗り越え、2021年に、村田から「社長をやってくれないか?」というお話がありました。
一年間は副社長という立場でサービスや業界をもっと理解する準備期間としてやらせてくださいとお願いをして、その翌年に社長をお引き受けしたという経緯です。
──創業者の村田ますみさんから、何かを託されたのでしょうか?
赤羽社長 彼女の言葉を使うと、私はゼロから1を作り出すタイプで、赤羽は1を10にも100にもできるタイプ。真逆なタイプの2人なので、うまく役割分担したい、というお話でした。それだったら、私はできますよ、ということでお受けしました。
──そこから散骨の事業に加え、「お別れ会プロデュース」「墓じまいサポート」「旅行サービス」などのサービスを立ち上げられたのですね。
赤羽社長 「お別れ会」はもともと親会社の鎌倉新書がやっていたもので、お別れ会と散骨は融合性があるので事業譲渡になり、その2つで走り始めたというのが最初です。
「お別れ会」というお話でいうと、楽天時代に星野仙一監督が亡くなられて、お別れ会に参加させていただいたことがあります。それまでは葬儀しか経験がなかったので、お別れ会って素敵だな、という印象がありました。それが今のハウスボートクラブや、現在サービスとして提供しているお別れ会につながるとはまったく思っていなかったのですが、振り返ってみると、ご縁が繋がったのかなという風には思っています。
──「お別れ会プロデュース」のサービスと、お客様とやっていく中で印象に残っているお話があれば、お聞かせいただけますか?
赤羽社長 「お別れ会プロデュース」は、メインは葬儀が終わったあとに「お別れ会」をお手伝いさせていただきますが、ご自身が亡くなる前に、元気な姿で感謝を伝えたい、という「(生前葬)ありがとうの会」というサービスの2軸でやっています。
お客様が100人いたら、100通りのストーリーがあるので、いろいろな思い出がありますが、最近のお話ですと、癌を患ったご本人から、私が亡くなったらお別れ会をやってほしい、というご依頼がありました。プランニングは生きている間にやりたいとのことで、ご主人とお姉様と一緒に会場選びからご本人の意向に沿って一緒にやらせていただきました。
私が担当者に伝えたのは、ご本人のメッセージだけは生きている間に動画で撮らせてもらってほしい、と。やっぱり亡くなってからだと、声は発しないので。
撮影はおひとりで行われ、ご主人もお姉様も内容を観ることなく当社で動画を保管していました。そして実際にお亡くなりになられて、お別れ会では段取り通りに献杯のご発声をしていくのですが、そこでモニターからご本人の映像が流れるわけです。会場に笑いをもたらすような短いスピーチと献杯の発生があり、参加されたみなさんには声が聞けて本当によかった、と喜んでいただけましたね。
──それは嬉しいサプライズですね。そういう風にひとり一人にカスタマイズされているのですか?
赤羽社長 もちろん形式的な大きな流れはありますが、少人数で開催の場合や、故人様の意思を反映させて自由に作ることができますし、ワインが好きだったら、特大のワイングラスを献花台の中に入れてしまうなど、いろいろとご提案しています。
──アイデアがおもしろいですね。
赤羽社長 アイデア勝負というか、お別れ会も、その人をどうやって表現してあげるか、どうやったらみなさんに喜んでいただけるか、そういうところに力を入れています。
最近の例としては、60代の女性からのご依頼がありました。パートナーの男性は年上の80代で、結婚はしていない内縁のご夫婦。二人ともあと1年という余命宣告をされていて、生きている間にフォトウェディングをしたい、病院に通いながらにはなるけれど、元気なうちに着物を着て浅草で撮りたい、というご依頼でした。そういうことは、大手の旅行会社などでは中々難しいかと思われます。でも我々は、そういうことも思い出に残してあげたいのでお受けさせいただきました。
──「墓じまいサポート」と「旅行サービス」のこともお聞かせいただけますか?
赤羽社長 「墓じまいサポート」のサービスは、海洋散骨のお客様といろいろ話していく中で、自分のお骨を海に撒きたい、でも今ある墓もしまいたい、という案件がけっこう多かったんです。ですので、墓じまいと海洋散骨をセットでサポートしたら、お客様のお役に立てるんじゃないか、という発想でした。実際にスモールテストをしたら、ご依頼が増えていったので事業化し、昨年の5月にリリースしました。
「旅行サービス」ももちろん散骨に紐づくのですが、当社では今、90か所以上で海洋散骨をやっていますが、以前はプランを選んでいただくだけだったんです。
例えば、東京にお住まいですが、福岡で散骨をしたい。では福岡の港で現地集合しましょう。費用はいくらです、というように。でも、それは何かちょっと違うかなと思ったんです。
私たちはセレモニーを大事にしているので、お客様が現地へ行くための手配や宿泊など、海洋散骨に至るまでの過程をトータルでサポートしたいという想いがありました。
また、例えば亡くなったお父さんがお母さんにプロポーズした場所があるなら、その思い出の地を息子さんたちが巡るようなツアーを作ることもできるので、そういうサポートをしてあげられたら、私たちがやる価値が高いのではないか。そんな思いから旅行業をやろうという判断になりました。
──赤羽社長がそういった事業をされる中で、大切にしていることは何ですか?
赤羽社長 私が一番に、常にみんなに言っているのは「お客様を主語に考えなさい」ということです。お客様がやりたいことを叶えるために私たちはどう提案するのか。そういう想いでいつもやっています。
だから会議でも、それはお客様が言っていることなのか、みんなが思っていることなのか。それによって考え方はまるっきり変わると言っています。
このエコリースもお客様の声から生まれた商品です。海は地球から借りているものですよね。生花もご用意しているのですが、お客様から、大切な人を綺麗なところで眠らせてあげたい、自然環境に配慮したものはないですか?というお声から始まり、それを体現したのがこのエコリースです。
自分たちの目線ではなく、お客様の声を必ず拾い上げなさい、ということを現場のスタッフに徹底して言っています。
あとは一般的に終活は暗いイメージがあると思うのですが、当社では「終活✖️エンターテイメント」というのを掲げていて、終活をする上で楽しいことをしていただきたい。
私たちはプロのプランナーであり、コーディネーターなので、ご依頼くださったお客様に喜んでもらう、もしくは参加されている方にも喜んでもらうよう演出するのが仕事だと思っています。
葬儀だったらこうだよね、という形式的なものではなく、故人様ひとり一人が、どういう人なのか、どういう想いで何がしたいのか。それを体現してあげることが重要だと思っています。これをやりたい、あれをやりたい、という希望を叶える点ではブライダルのサービスと近しいかと思います。
実際には、できないと思えるような要望もたくさんあります。ですが我々は「できない」ということは一切言いません。お客様が望んでいるものを、形を変えてでも、100%に近づけてご提供します。楽しい空間を作ってほしい、というのであれば、それを実現させていきます。
できないことを考える時間があるんだったら、できることを考える。できることを考えていけば、それは必ずできるんだ、という発想です。自分がこれをやりたい、と思えば、やるために考えるわけです。そういう発想はいつも持つようにしています。
あとは、実現することに向けて言葉にする、ということも大事にしています。何か目標を決めて発信したら、そのために脳が働きます。なので社員にも口に出してください、と。言ったからには、やらざるを得ないので(笑)
──新規ビジネスを立ち上げるためのアイデアの発想を得るために、普段から何か意識してることなどありますか?
赤羽社長 いろいろな人や先輩経営者などに会ったり、映画に行くのもそうですし、道端の広告を見るのもそうですし、インプット量、いわゆる引き出しがなかったら、おそらく新たな発想が生まれないと思います。
新規事業で大事なことはスモールテストをするということ、そしてストーリーを描くことです。
このアロマは立会粉骨の大事なセレモニーの際にお客様に選んでいただいています。香りでリラックスできるだけではなく、これがお母さんの香りとして思い出の1本となるならば、無くなったらまた買いに来ていただけますよね。そうすると、その方と接点を持ち続けることができますし、会社にとっては売上にもなります。そういうストーリーをすごく大事にしたいんです。
単にこれを買ってください、ではダメなんです。これを購入検討をいただくために、何を仕掛けていくのか、もしくはその先のゴールが何なのか、というのを常に考えています。
──そういう発想は前からあったのですか?
赤羽社長 それでいうと、球団に入った時に、その発想を叩き込まれた感じですね。当時、野球の楽天イーグルスファン以外をどう集めるのか、というのが私のミッションだったんです。それがサッカー好きな人を集めるとか、スポーツに興味のない一般のお客様、ご家族や3世代をどう集めるのか。そうなった時に、単発でイベントをやっても来ないんです。その時にストーリーがすごく大事で、こういうことをやると、こう繋がるよね、こう繋がったから、さらにこうなるよね、そしたら、またここに新しいイベントを投入しようとか、そこにストーリーを描くことが大事で、それはすごく叩き込まれましたね。
──今後、サービスとして、どんな展開を今考えていらっしゃいますか?
赤羽社長 展開としては、やはり我々は海洋散骨の会社なので、「散骨といえばブルーオーシャンセレモニー」というブランド化を強化していきたい思いはあります。
ですが、海洋散骨はそもそも世の中に知られていないので、「海洋散骨」という選択肢があるということを、まずはみなさんに知っていただきたい、そういう思いで活動をしています。
また、国内に関しては地元に根付いた企業様と一緒にフランチャイズ展開をしていきたい。
そして海外展開ですね。直近では韓国、グアムもリリースして、ハワイ、仁川、釜山、グアム4拠点で出航ができるようになりましたが、お客様は海外でも思い出の地があるんです。数を追うわけではなくて、お客様が望む場所をきちんと提供したいという思いがあるので、そこに力を入れていきたいと思っています。
──どんな未来を目指していらっしゃいますか?
赤羽社長 終活というと一回限りのイメージがあるかもしれませんが、私はちょっとそれは違うかなと思っていて。もちろん故人様としては一回限りかもしれませんが、ご家族や親戚の方がいらしたり、ご友人も含めて、大切な人との“つながり”があると思うんです。そういう人たちが、旅行を通して、またその場所を訪れたり。
終活というと、エンディングノートのことはよく言われますが、もっと大事なのは「思い出を作る」ということ。残された家族に対して、一緒に思い出を作って、つながっていく。それを叶える手段が旅行も一つだと思いますし、いろいろなカタチで思い出に残してほしい。そこを私たちがサポートしています。
終活というのは、結局は「自分で決める」ものだと思っています。ご家族がこうしたい、というのはもちろんですが、「自分がどういうカタチで終わりたいのか」というのは、自分自身で選んでプランニングして欲しい。
ですので早いうちから、きちんとした情報を得て「自分がどうしたいか」の選択肢というものをまず広げましょう、まずは自分で考えてみませんか?というご提案をしています。
──赤羽社長にとって、青はどんなイメージでしょうか?ブルーオーシャンセレモニーのサービス名に込めた想いをお聞かせいただけますか?
赤羽社長 海洋散骨というのは、やはり海というのが象徴的です。青い海に旅立つ、という意味で、ブルーオーシャンというブランドネームにしたことから当社はスタートしています。
私は苗字が赤羽なのと、楽天もクリムゾンレッドだったので、もともとは赤が好きだったんですよね(笑)。でもこの仕事に着いた時に、海というのは青ですし、私自身もスーツを着る時には青いネクタイなど、青を使うことが多くなりましたし、青い色は好きですね。
──オフィスは、赤羽社長が全体をディレクションされたということで、海をイメージする青が随所に散りばめられています。散骨される場所にも足を運んで確認されているとのことですが、ここの海は青くてきれいだったという場所などはありますか?
赤羽社長 青くてきれいな海というと、国内ではやはり沖縄が一番ですね。海面にお骨を撒いても、水が透き通っているのでよく見えます。南紀白浜や、熊本の海もきれいですね。
我々は見送る人たちに思い出を残してもらいたい、という気持ちがあるので、散骨は撒いて終わりではなく、またここに戻ってきてほしい、という想いがあります。
ご乗船された方は、故人様を送り出すことがメインですが、自分たちもこの青い海に来ることを楽しんでもらいたい。沖縄へも、墓参り、ではないですけど、また来るよ、って。旅行のように楽しみにまた訪れていただきたいと思います。
我々が提供していることは、海洋散骨はもちろん、お別れ会もそうですが、お客様に喜んでもらって、それを演出する仕事なんです。旅行もそうで、お客様の思い出の地を回るツアーを組めるのはうちくらいしかないので。そう考えると、旅行サービスってすごくいいアイデアだったなと思います。
株式会社ハウスボートクラブ
代表取締役社長 赤羽真聡
https://hbclub.co.jp/
https://blueoceanceremony.jp/
「大切な人とのつながりを大事にする社会を目指す」をビジョンに掲げ、海洋散骨事業「ブルーオーシャンセレモニー」、お別れ会プロデュース事業「Story(ストーリー)」、思い出に残る体験を提供する旅行「えんの旅」、改葬・お墓の引越しサポート「お墓の引越し&墓じまいくん」の4つのサービスを展開している。「偲ぶ」ということが、悲しみに暮れるということではなく、大切な人との結びつきを改めて感じ、感謝やあたたかな気持ちにあふれるような終活・葬送の機会を提供すべく、日々取り組んでいる。
■旅立つ人、見送る人、それぞれの思いやりをかたちに
「こんなふうに人生の最期をむかえたい」「こんな場所で眠りたい」という故人様のお気持ちを実現する背景には、その周りにいる方々とのつながりや、お互いを思いやる心があります。当社の取り組みは、「ご縁」によって成り立っているものです。当社と、お客様のご縁。ご家族様と、故人様のご縁。わたしたちの活動に賛同いただいている事業者の皆様とのご縁。これまでも、この先も、心が通うつながりを大切に育みながら、一人ひとりの思いやりに寄り添い、かたちにするお手伝いに心を尽くしてまいります。
赤羽真聡 masatoshi akaba
楽天株式会社(現:楽天グループ株式会社)にて日本最大の就職活動SNS「みん就(みんなの就職活動日記)」の営業責任者を歴任。
その後、株式会社楽天野球団で球団公式アプリ「At Eagles」、FMラジオ局「Rakuten.FM TOHOKU」の立上げを担う。
2018年に終活関連プラットフォーム事業を主とする株式会社鎌倉新書に入社後、株式会社ハウスボートクラブへ出向。
2022年代表取締役社長COO、2023年2月には代表取締役社長に就任し、複数の新サービス(お別れ会プロデュース・墓じまいサポート・旅行事業)を展開。「葬送×エンタテインメント」をキーワードに、悲しみだけで終わらせない供養の選択肢を提供する。
「海洋散骨」体験クルーズ
実際におこなわれる海洋散骨を体験していただき、さまざまな疑問にお答えするクルーズです。
東京湾の景観を船の上で楽しみながら、新しいご供養について考えてみましょう。
ご興味ある方ならどなたでも。百聞は一見にしかず、お気軽にご参加ください。
https://blueoceanceremony.jp/trial/