Interview 第8回 BlueMeme(ブルーミーム)

THE BLUE Spirits インタビュー第8弾は、株式会社BlueMeme・代表取締役社長 松岡真功さん。
フランス語の語源で「光り輝く」を意味する「Blue」と、文化を形作る情報の伝達を象徴する「Meme」を組み合わせた「株式会社BlueMeme」は、最新技術を駆使したシステム開発を行うIT企業です。同社ではシステム開発未経験者や文系出身者、元スポーツ選手、現役の音楽家など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が活躍しており、その多様性とチャレンジ精神を大切にしています。そんなBlueMemeの松岡社長に、これまでの軌跡を振り返るとともに、そこから導き出された理念や価値観についてお話を伺いました。

──松岡社長は、幼少期はどんなお子さんでしたか?

松岡社長 母から聞いたエピソードですが、2〜3歳の頃、眼科に行った時に並んでいる機械を見て、それを1個ずつ全部「これは何?」「これは何?」って聞いていくんですよ。それを毎回やるので、周りから「これはなに坊やが来た!」と言われていたそうです。

──常にいろいろなものに興味があったのでしょうか?

松岡社長 興味があるというか、仕組みを知りたくて。機械じゃなくても、例えば水って、液体って何なんだろう?「青色」だけれど、何がどうなってそう見えるのか。そんなふうに、目に見えるものも、見えないものについても、構造や仕組みにとにかく興味があったんですよね。

──そこからIT業界に進むきっかけのようなものがあったのですか?

松岡社長 小学校3年生のとき、父がパソコンを買ってきたんです。それを勝手に触っているうちに、パソコンがどんな仕組みで動いているのかに興味を持ちました。「プログラミングをすることによって、コンピューターが動くんだ。」その仕組みが分かって、沢山パソコン雑誌を買って、プログラミングを覚えたのが小学校から中学校にかけての頃でした。

──小学校の頃から!すごいですね。

松岡社長 自然と身についたこともあって、取り組むのが全く苦ではありませんでした。それで、自分の得意分野を活かしてビジネスをしようと思って。振り返ると、もし父があのときパソコンを買っていなかったら、今の自分はなかったのかもしれないと思います。環境というのは本当に不思議なもので、もしかすると全く違う人生を歩んでいたかもしれません。

BlueMemeでは、従来のプログラミング手法とは異なり、「ローコード」という技術を活用した開発を行っています。ローコードは、プログラマーの作業を自動化することができ、プログラミング技術の知識が少ない方でも、視覚的なツールを使ってアプリケーションの開発ができるという特徴があります。BlueMemeがこのような技術を採用する背景についてもお聞きしました。

──ところで、もともとは「BlueMeme」は社名ではなく、松岡社長が会社員時代に開発したソフトウェア製品の名前だったそうですね。なぜ「Blue」を採用したのでしょうか。

松岡社長 当社の理念である「文化を形成する優れた情報を世界中に伝えていく」は、起業前から私の中に深く根付いており、「BlueMeme」にはその思いが込められています。
Blueはフランス語の語源で「光り輝く」という意味を持ち、「優れた文化を形成するソフトウェア」を象徴する言葉としてぴったりだと思いました。また「ブループリント(設計図)」という、IT業界においてシステム開発の核となる概念を指す言葉とも通じていたため、この点も選定理由の一つです。ちなみに「Meme」には「文化を形作る情報の伝達」という意味があります。

──なるほど、製品自体はその後、どのように展開されたのでしょうか?

松岡社長 展開されませんでした(笑)。日本企業は導入事例がない製品を敬遠する傾向があるため、売り上げが伸びなかったんです。その経験から、起業時には実績のある海外製品を採用しようと決めました。当時、私たちは理想とするソフトウェアを求めて、様々な国のありとあらゆる製品を徹底的に調べました。そして、最終的にたどり着いたのがポルトガル生まれのローコード開発基盤「OutSystems(アウトシステムズ)」です。当社の現在の主力ツールでもあります。

──OutSystemsを導入する際、ポルトガルのOutSystems本社に訪れた際のエピソードが「青」にまつわるということですが、お聞かせいただけますか?

松岡社長 当時、当社のオフィスはルイス・バラガンという建築家にインスピレーションを受け、真っ青な壁、赤やピンクの壁など、ビビッドで特徴的な配色にしていました。原色が絶妙なバランスで心地よい空間を作り出すそのデザインが大好きで。そしたら偶然にも、OutSystemsのオフィスも似たような配色で構成されていて、そっくりだったんです。真っ青な壁を前にした瞬間、「これなら考え方や哲学もきっと合うはずだ。ここなら一緒にやっていける!」という確信を抱きました。

──その直感が当たったということですね、運命的な「青」の出会いですね。

松岡社長 運命かどうかはわかりませんが、私は昔から運が良い方だと思っています。実は、自分の会社を持ちたいという強い思いがあって現在に至ったわけではなく、周囲のお世話になった方々に長年起業を勧められ、そこまで言ってくれるなら期待に応えなければと、使命感のようなものでビジネスを始めました。
色々なことに挑戦していく過程で、多くの出会いがあり、その出会いを含めた「環境」からチャンスをいただきました。良い環境に恵まれたおかげで、今の自分があると感じています。

──松岡社長がOutSystemsをはじめとしたローコードを活用してシステム開発事業を展開しようと考えた際の着眼点も、「環境」によるものですか?

松岡社長 やっと本題ですね(笑)。ローコードはプログラマーの作業を自動化するツールですが、システムの設計書はエンジニア自身が作成する必要があります。当社が採用しているローコードプラットフォーム「OutSystems(アウトシステムズ)」では、設計書を入れ込むとそのままシステムが自動生成されるため、設計書の質が生成されたシステムにダイレクトに反映されます。形になったシステムを見て「自分はこんな雑な設計をしていたのか」と気づくことができます。
ローコードを活用することで、エンジニア一人ひとりが設計書の重要性を深く理解し、質の高いシステムの構築を意識することができるようになる。そういった仕組みを作ることが必要だと考えたんです。環境作りとも言えますかね。

───IT業界全体の成長を促進したい、という想いも込められているのですね。

松岡社長 そうですね。私は小さい頃からずっとプログラミングをしてきたので一見して分かるのですが、質が良くないソフトウェアって本当にたくさんあるんです。それがどうしても気になって。
今のエンジニアって、学ぶ場が少ないんです。昔、コンピューターが高価だった時代には、エンジニアが学ぶ機会が豊富にありました。冷蔵庫ほどの大きさのコンピューターが何億円もするので、ビジネスの中心が「大規模なハードウェアの販売」にあったんです。コンピューターを購入すると、エンジニア数名がサポートとして付き、これらの人件費はハードウェア販売で賄われる、というビジネスモデルが成り立っていたので、若手エンジニアはトップクラスの設計者のもとで、実践を通じてスキルを磨くことができました。
今はコンピューターが小型化・高速化し、価格が大幅に下がった結果、「エンジニアを一人あたり月額で提供する」という形に変わっています。優秀なエンジニアには仕事があるものの、昔のように若手が学ぶ機会は減ってしまって、技術者が育ちづらい状況であると感じています。

──ローコードを採用する理由のひとつも、そういった現状に対する改善の意識から来ているのですね。そんな松岡社長が、ビジネスを進めていく上で大切にしていることは何ですか?

松岡社長 若手が学ぶ場が減少している話と繋がりますが、私は若い人にチャンスを与え、学びの機会と環境を提供することを大切にしています。未経験者を採用し、短期間でローコードエンジニアに育成してサービスを提供する当社のビジネスモデルは、まさにこの理念に基づいて成り立っており、実際、当社社員は文系出身者が半分を占めています。
過去にITに全く触れていなくても、これからITを学びたいという人にはチャンスを与えたい。誰しも自分がまだ気づいていない才能を持っていると思うので、それを引っ張り出してあげたいですね。
お客様に対しても同様です。お客様も自社の本当の課題や、可能性に気づいていないことが多いです。私たちは、ITの力を活用して、技術力やノウハウと共に新しい発見や学びの機会をご提供し、競争力をさらに高めるお手伝いをしたいと考えています。

──素敵ですね。文系出身の社員が半数ということでしたが、エンジニアでありながらプロのピアニストとしても活動している社員もいらっしゃるそうですね。

松岡社長 元スポーツインストラクター、元公務員、元自衛官の社員もいますよ。最近では、元プロ野球選手の社員が中心となって野球部を発足させました。これまで当社には部活がなかったので、まさに新しいチャレンジですね(笑)。こういったやりたいことを気軽に提案し、実現できる風土が作られていることに、私自身もとても感心しています。

──様々なバックグラウンドを持つ、ユニークなメンバーが集まっているんですね。まったく別業種や未経験から、ITをやりたいという考えに至るには、どういった過程があるのでしょうか。

松岡社長 それは個々によって違うと思いますが、私自身は、やりたいことが決まっていない人の方が好きですね。そういう人にこそ、チャレンジや成長の機会を与えたいと思っています。若い頃、やりたいことが見つからないのは当然だと思います。選択肢が無限に広がっていて、何を選ぶべきか迷ってしまうのが普通です。私が小学生の頃からプログラミングに触れ、IT業界に足を踏み入れたことも、決して「やりたいこと」として最初から選んだわけではなく、その時々で自分が興味を持ったことの結果ですから。

だから、何をやればいいか分からないという人はむしろ、広い視野を持っているのだと思います。それに対して、最初からやりたいことが決まっている人は、逆にその選択肢を狭めてしまっているのかもしれません。若い頃は、どうしても視野が狭くなりがちですから。

私は、いろいろな変化を楽しみ、時代の流れに合わせて自分を変えていける柔軟な視点を持つことが大切だと思います。そういった意味で、選択肢がたくさんある中で、自分の道を見つけられる、チャレンジングな環境を提供したいなと。

──御社のサービスを通じて、今後、どんな未来を目指していますか?

松岡社長 当社はITに不慣れな新卒を採用し、教育を通じて実際に利益を上げ、ビジネスを成り立たせています。このアプローチは他の日本企業にも広げることができると信じています。若い世代に新しい技術を積極的に教え、組織の仕組みを構築することで、企業が自立し、成長できる環境を整えることができます。それにより、多くの企業が持続可能な発展を遂げ、日本全体の企業力が向上すると確信しています。

ある人の言葉で「若い人をバッターボックスに立たせろ」というものがあります。最低限のバットの振り方を教えたら、補欠でなく実際にフィールドに立たせるべきだと。実戦から学ぶことは非常に多いです。ITも同じで、テクノロジーを駆使することでそれは実現できると考えているので、今後も若い人たちを積極的に表に出していきたいですね。いろんなことに挑戦して、時には挫折し、成功体験を積んで、成長していってほしいです。

日本企業全体で、若い人たちが活躍できる場を作れるようになればいいなと思います。私たちの会社ではその実現に向けたノウハウも持っています。同じ考えを持つ経営者に伝えていきたいですね。

──最後に、今回インタビューをお受けいただきましたが、その理由はなんでしょうか?

松岡社長 ブルー専門のメディアだからです。もう、そこだけに完全に特化してやられているので、非常に一貫性を感じます。方針やポリシーがしっかりしていれば、どんなことをしてもブレることはないと思うんです。意思決定の軸って本当に重要だと、日々感じておりますので(笑)

素敵なお話をありがとうございました。

株式会社BlueMeme
代表取締役 松岡 真功
https://www.bluememe.jp/

事業内容:ローコードとアジャイルを中心としたDX事業
・ビジネスアーキテクチャ・コンサルティング
・大規模アジャイル開発プロジェクトマネジメント
・ローコードを中心としたシステム受託開発
・ローコードエンジニアの育成及び教育
・ソフトウェア製品の販売及びサポート

■経営理念
新たな価値を創造し、常識を変え、文化を進化させる
いまから一万年ほど前、人類は「定住」という生活様式の変化によって、「所有」という新しい価値を創造し、これまでの「常識」を大きく変化させ、現代の国家の礎となる「文化と文明」を作り上げてきました。そして、20世紀に誕生した「コンピューター技術」は、これまでに類をみないスピードで、私たちの生活を変化させ、これまでの常識を大きく覆しました。わずか数十年という「コンピューター技術」の歴史は、小さな発想や発明によって世界中の常識を変え、文化を進化させることができるということを、私たちに示しています。当社の社名であるBlueMemeは、「光り輝く」という語源をもつ「blue(ブルー)」と、文化を形成する情報を伝える意伝子を意味する「meme(ミーム)」という二つの単語から構成されています。これは「文化を形成する優れた情報を世界中に伝えていく」という理念を込めたものです。私たちは、固定概念にとらわれることなく、新たな価値を創造することで、これまでの常識を変え、絶え間ない文化の進化に挑戦し続けていきます。

■ミッション
私たちは、最新技術を活用した次世代型の情報システム開発を実現し、
日本企業の国際的な競争力を向上させます

私たちは国内最大級のローコード技術とアジャイル手法のプロフェッショナル集団として、日本企業のモダナイゼーション/DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援しております。経済産業省が2018年に発表したDXレポートでは「2025年の崖」と題して、日本国内の企業が市場で勝ち抜くためにはDXの推進が必要不可欠であり、DXを推進しなければ業務効率・競争力の低下は避けられずに「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警告しています。日本企業のDXを進めるためには、従来の外部システムインテグレーターに依存しない開発の内製化が必要不可欠です。我々BlueMemeは、2021年を「ローコード開発の普及元年」と捉え、日本企業が解決すべき課題を、独自の手法で解決し、社会に貢献していきたいと考えています。

松岡 真功(Masanori Matsuoka)
1998年4月 株式会社システム・クリニック 入社
2000年8月 日本オンライン証券株式会社(現 auカブコム証券株式会社) 入社
2001年5月 SAPジャパン株式会社 入社
2004年8月 ネットコンシャス株式会社
2006年6月 サン・マイクロシステムズ株式会社(現 日本オラクル株式会社) 入社
2009年8月 株式会社インテック・アイティ・キャピタル(現 株式会社SXキャピタル) 入社
2009年8月 当社へ出向
2010年5月 当社 入社 代表取締役社長 最高経営責任者(現任)
2017年12月 株式会社OPENMODELS 代表取締役社長
2022年4月 株式会社BlueMeme Partners 取締役(現任)
2023年4月  株式会社OPENMODELS 取締役会長(現任)
2023年10月  国立大学法人九州大学 客員教授(現任)