2018年8月4日(土)〜6日(月)まで、
【青い洋服展】を開催しました。
VOICE初の展示会で、
洋服は、村上春樹さんの小説に出てくる
女性が着ているワンピースをイメージして作りました。
村上春樹さんの小説には、
青い洋服がたくさん登場します。
その世界観を表現できたらと思い、開催しました。
今回の展示会に至るまでに、
さまざまなことがありました。
いろいろな出来事があり、
いろいろなきっかけがあり、
いろいろなインスピレーションがあり、
そしてタイミングもあって、開催することになりました。
その経緯を書いていこうと思います。
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はじまりはここからです。
2017年、鎌倉にいらっしゃる小川純一さんのセッションを受ける機会がありました。
(小川さんは現在、Kai というお名前で活動されています)
小川さんは、一昨年末に定期的にされていたセッションを終了してしまいましたが、
7月にイレギュラーで特別にセッションをされるということで、募集していたので申し込んだところ、
偶然にも倍率の高い中、選んでいただくことができ、
セッションを受けさせていただきました。
その時に、小川さんから、
だいぶ体が硬いですね、よい鍼灸のところがあるので、もしよかったらご紹介しますよ、と言って
ご紹介くださったのが、湘南台にあるサンセットヒーリングさんです。
後日、サンセットヒーリングさんを訪れることになりました。
そこである出来事が待っていたのです。
サンセットヒーリングさんは、江ノ電の湘南台にありました。
古いお宅の部屋の中にあります。
鍼灸の施術をする前に、テーブルのあるお部屋に案内されて、白湯を出されました。
それから、向かい合って座り、白湯を飲みながら、
私が今までどんな経験をして生きてきたのか(声を無くしたことなどいろいろ)、
今、どんなことをしているのか、
そんなことをたくさんお話させていただきました。
そのお部屋には、両脇に本棚があり、
ヨガやアーユルベーダ、スピリチュアルの本など、
いろんな本がそこにありました。
サンセットヒーリングのかおりさんは、
もともと古本屋さんで働いていたのです。
そんな風に、本棚にはかおりさんのお仕事に関わる本がたくさん並んでいたのですが、
その本の合間、合間に、村上春樹さんの本が
ちょっと不思議な感じで挟まっていました。
私は学生の頃から村上春樹さんが大好きで、
今でも繰り返し何度も読んでいるほど、大好きな作家です。
若い頃はさほどわからなかったけれど、
村上春樹さんの小説には、哲学や心理学、潜在意識のことなどがふんだんに盛り込まれていて、
最初は物語のストーリー展開に惹き込まれる感じですが、
何度も読み返すと、そこには自分の考え方や生き方に
力を与えてくれるようなこと、
方向性を指し示してくれるもの、
勇気付けてくれるもの、
そんな文章たちとたくさん出会います。
村上さんの文体も大好きで、
その文体があるからこそ、何度読んでも飽きることがなく、
いつも、いつでも、その小説の世界に連れていってくれます。
サンセットヒーリングのかおりさんに、
村上春樹さんが好きですか?とお聞きしたら、
彼女も大好き!ということでした。
二人でひとしきり、村上春樹さんの話題で盛り上がり、
いろいろなお話をしたあとで、ふと、かおりさんが、
「saraさんの作る洋服は、村上春樹さんの小説に出てくる女性が着ている洋服と雰囲気が重なりますね」と
おっしゃってくれました。
「VOICEの洋服は、村上春樹さんの小説に出てくる洋服の描写とイメージがかぶる。
春樹さんの女の人の洋服の描写って、すごく気持ちいい。
VOICEには、そのイメージがある。
派手なものではないけれど、その人にぴったりとあつらえているというか、
VOICEの作りたいものは、春樹さんの描写に近い感覚の洋服だと思う。」
そう話してくれました。
まさに、私にとっては目から鱗でした。
ファッションが好き、村上春樹さんが好き。
そのふたつは、点と点でしかなかったのに、
彼女の一言で、一本の線で繋がったのです。
本当にびっくりしました。
村上春樹さんの小説には、素敵なワンピースの描写がたくさん出てきます。
しかもブルーが多いのです。
『ノルウェイの森』では、
彼女はとてもきちんと化粧をして金のイヤリングをつけ、
深いブルーの素敵なワンピースを着て、上品なかたちの赤いパンプスをはいていた。
僕かがワンピースの色を賞めると、
これはミッドナイト・ブルーっていうのよとハツミさんは教えてくれた。
外に出ると夜の空気はずいぶん冷ややかになっていた。
ハツミさんは淡いグレーのカーディガンを羽織った。
(中略)
僕にもあなたみたいなお姉さんがいたらよかったなと突然思ったんです。
スマートでシックで、ミッドナイト・ブルーのワンピースと
金のイヤリングがよく似合って、ビリヤード上手なお姉さんがね。
という描写があります。
このミッドナイト・ブルーのワンピースが
素敵だなぁとずっと思っていました。
また、『海辺のカフカ』では、
彼女は裾の長い蒼い服を着ている。
ずっと昔どこかで着たことがあるドレスだ。
歩くとその裾がかすか な音を立てる。
窓の外には浜辺がある。波の音が聞こえる。
誰かの声も聞こえる。風の中に潮の匂いかが感じられる。
という描写があったり。
春樹さんの小説には、料理の描写がたくさん出てきます。
スパゲティを茹でて食べたり、オムレツを作って食べたり。
そんな料理の描写を集めてレシピを掲載した
「村上レシピ」という本があります。
また、春樹さんの小説には、
ジャズやクラシックの音楽がたくさん流れていて、
それを紹介する本が何冊か出版されています。
かおりさんとそんな話していて、
「料理や音楽はあるけれど、洋服ってないよね。
春樹さんの小説に出てくる洋服展とかやったら素敵ね!」
なんていう話になったのです!
それはなんて素敵なんでしょう。
私がぜひやりたい、と思いました。
もし可能なら、ノルウェイの森に出てくるミッドナイト・ブルーのワンピースには、
『ノルウェイの森』というタグが付けられたら、
ファンとしてはたまらない!なんて思ったわけです。
でも著作権の問題もあるし、ご本人の許可を得られるなら・・・
という一縷の望みで、春樹さんのお手紙を書くことにしました。
もちろんご自宅の住所はわからないので、
(大磯に住んでいらっしゃることは、大橋歩さんの雑誌「アルネ」で知っていたのですが)
新潮社の編集部にお送りすることにしました。
長い長い手紙を書きました。
春樹さんの小説をどれくらい前から読んでいて、
いかに好きか、どれだけ好きか、ということから、
青い洋服展をやりたいこと、そこに至るまでの経緯、
タグを付けたいこと、そして図々しくもぜひお会いしたい、
ということまで、とにかく想いのすべてを書いてお手紙を出しました。
そのお手紙が、春樹さんの手元へ届いたのかは、わかりません。
それが、2018年2月の初旬でした。
その年の春、春樹さんが(というか新潮社が)
「今年も読者との交流をします。
でも今年は今までとは違った形でやります。」という発表をされました。
春樹さんは数年に一度、特設ウェブサイトを立ち上げて、
メールをお送りすると、春樹さんから直接メールでお返事がもらえる、
という貴重な交流の場がありました。
質問に答えていただいたり、ハンドルネームをつけてもらったり。
私は過去に2度、お返事をいただいたことがあり、
そのうちの1回は、「海辺のカフカ」で、
これも今思うと、本当に意図せず、たまたまだったのですが、
佐伯さんの青いワピースのことについて書いたものでした。
そんなお返事をもらって、幸せな気持ちになったり。
なので、今年も読者との交流は嬉しいな。
今年はどんなカタチでやるんだろうな。と思っていたわけです。
そうしたら、その後、6月に発表があり、
今年は「ラジオをやります!」ということでした。
なんと!ラジオ!8月5日の夏に!
春樹さんは日本にいないこともあるので、
ラジオなら、その日は日本にいるに違いない!と
勝手に、うっかり、生放送と勘違いし、(のちに収録とわかりました)
青い洋服展をやるなら、8月5日にやるしかない!と
鼻息荒く意気込んで、8月5日を中心に、8月4日〜6日の3日間で
「青い洋服展」を開催することに決めました。
そのあとで、「村上レシピ」を監修された岡本雨さんにも
インスタグラムで突然連絡をとり、大船まで会いに行きました。
春樹さんの小説にまつわる洋服展をやりたいんだけど、という話をさせていただいて。
突撃隊で会いにいってしまったけれど、快く会ってくださって、感謝しています。
岡本さんとはその後も飲みに行ったり、読書会に来てくださったりと、良いご縁が続いています。
そして、展示会の会場決めもいろいろありました。
素敵な雑貨の某セレクトショップのイベントスペースへ
企画書を出してもお返事はなく、
表参道の交差点にある山陽堂書店に打診したら、
春樹さんご本人の許可がないとダメです、と言われ。
紀伊国屋書店のイベントスペースも見に行きましたが、
窓がなく、閉塞感があったので、私的にやりたい空間と思えず、
他にもいろいろなスペースを見に行きました。
春樹さんの青いワンピースなので、場所は青山周辺と考えていました。
いろいろなスペースを見ていく中で、
ある場所は、「外に鍵が置いてあるので、開けて勝手に見てください」というところもありました。
多くのスペースは、空間とトイレがあるのみの箱貸し。
スペースによっては、キッチンカウンターがあり、コーヒーが出せるようなところもありました。
いろいろ見ていく中で、私が熊本でプロモーションビデオの撮影があるので、
出発の午前中に内覧できる、というところがあり、
スーツケースを持って、朝から出かけて行きました。
そこは、裏原宿のちょっと入った場所にあります。
地図を見ながらそこへたどり着くと、
そのスペースのオーナーさんご夫婦が出迎えてくれました。
そこは、真っ白くて細長いスペース。奥には試着室もありました。
大きなガラス窓があり、外にはウッドデッキもあるところでした。
試着室があるのはありがたいなぁ。と思い、
お話を聞いていると、実は横浜でアパレルブランドを経営されていて、
その展示会で使用できるように作った場所で、
使わない時は貸しているということでした。
とにかく真っ白い空間がとても気に入ってしまい、
試着室があることもありがたいし、
何より、ご夫婦がとっても素敵で、
内覧したあと、このあと熊本へ行くんですよ、なんて話をしていたら、
お見送りで出口までスーツケースを持ってくださったりして、
「良い旅を」と見送ってくださいました。
鍵を開けて勝手に見てください、というスペース貸しとは違い、
ご夫婦で出迎えてくださった温かい対応に、
そして真っ白いスペースと、試着室があること。
ウッドデッキにパラソル付き、ということで、
なんの迷いもなく、ここで開催することに決めました。
お二人は、横浜で「ROU ROU」というブランドを展開されています。
https://www.rourou.com/
展示会初日にも、横浜中華街のおいしい差し入れを持ってきてくれたり、いつも心遣いが素敵な方達でした。
展示会が終わったあと、お二人の横浜のお店へお礼に行ったのですが、それはまた今度のお話。
さて、場所が決まれば、あとは中身です。
並べる洋服ももちろんですが、内装をどうするか。
そこで、フラワーデザイナーの芹田さんに相談しました。
私はやりたいことがすごく明確で、やりたい世界観があり、それを企画書に起こし、
彼に見せながら、こういう世界を作りたいんだよね、と説明しました。
白い空間に、青いドレス。
花はデルフィニムと決めていて、
春樹さんの小説には、よく森が出てくるので、
森のイメージも出したい、と。
青い洋服展
〜小確幸の森〜
というタイトルを付けました。
小確幸とは、春樹さんのエッセイに出てくる言葉で、
「小さくとも確かな幸せ」という意味です。
展示会に来てくださった方が、
ちょっとでも幸せな気持ちで帰ってもらえたら。という想いを込めてタイトルを付けました。
芹田さんと一緒にお仕事をしている一級建築士の美幸さんも加わって、
私がやりたい企画と想いと世界観を伝え、その場は終わりました。
二人とも、「小確幸」ってすごく素敵ね、と共感してくれました。
その後、展示会当日までは、洋服の準備やら、
備品の用意やら、芹田さんたちとも何度か打ち合わせを重ねていきました。
内装には、春樹さんの小説の世界観をちりばめたいと考えていて、
試着室は、ねじまき鳥クロニクルに出てくる「仮縫い室」にしたり、
加納マルタの被っている「赤いビニールの帽子」を帽子作家の友人に特注したりしました。
白い空間に、青いドレスたち。その中に紅一点「赤いビニールの帽子」を配置。
ウッドデッキに面する大きなガラスに、その小説の一節を書いたり。
本当は、ハリボテでもいいから、ウッドデッキに「井戸」も作ろうかと思ったのですが、
今回はやむなく見送りました。
さらに「レモンドロップ」も用意して、来てくださった方にお配りしました。
他にも、絵本作家で春樹ファンのいづみさんに、青い絵本や本を並べていただきました。
いづみさんは、絵本と雑貨を扱うお店をやっていて、大人向けに絵本の講座をしたりしています。
いづみさんとは数年前にご縁をいただき、
青い洋服展の期間の真ん中、8月5日には、その空間で、
二人で「村上ラジオ」を聴いたり、その後開催された春樹さんの朗読会へもご一緒しました。
いろいろな方に関わっていただき、いろいろな方にご協力いただいて、
開催することができました。
夏の暑い真っ盛りの中、こんな時期に展示会をするアパレルプランドもなく、
夏に夏物展示会をするという、アパレル業界から見たら、
わけのわからない展示会だったと思います。
でも。
私はこれがやりたかったんです。
春樹さんがラジオをやるその日に。
春樹さんの小説の世界をちりばめ、青いドレスをたくさん吊るし、
青い花と緑あふれた空間で、「村上ラジオ」を聴く。
何かに突き動かされたように始まり、
準備期間は約2ヶ月という短期間。
予算もなく、経験もなく、アパレルのしきたりも全くわかっておらず。
それでも、やりたかったこと。
大好きな春樹さんの世界観を洋服と空間で演出できたこと。
私一人のやることなので、小さいことだったかもしれません。
でも多くの方が関わって協力して、手伝ってくれました。
展示会前日には、元スタイリストでご自身のブランドも展開いた経験があり、
今は、オーガニックコットンのベビー服やタオルの店舗を経営している
大先輩の安東裕美さんが手伝いに来てくれました。
洋服一着一着を大切に扱うことを、丁寧に教えてくれました。
そして迎えた『青い洋服展』3日間、とてもとても幸せな時間でした。
たくさんの友人・知人が足を運んでくださって、
通りすがりの人にも見ていただけました。
青い洋服好きの人がたくさん訪れて、
青い洋服をたくさん試着してくれました。
春樹さんの世界観の中で。
そして、足を運んでくださった方々が、
用意した青いシャンパンを飲みながら、
ウッドデッキで、みんなで交流する機会となり、
楽しい時間を過ごしてくださったみたいで、とても良かったです。
こんな幸せなことは本当にないなぁ。と思った3日間でした。
3日間終わって、片付けるのが本当に惜しい気持ちでした。
でもやりきった感はすごくありました。
フワラーデザイナーの芹田さんと片付けながら、片付けつつも、
展示会ハイ(笑)みたいになりながら、テンション高く。
本当に良い経験をさせていただきました。
準備に関わってくれた人たち、足を運んでくれた人たち、
ただただ、みんなに感謝の気持ちでいっぱいです。
私の作る洋服を「春樹さんの世界の雰囲気のよう」と、
そのきっかけとなる言葉をくれたかおりさんは、
「スプートニクの恋人」のすみれのだぼだぼのジャケットが見てみたい。
またある人は、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」に出てくる、
太った女の子が着ているピンクのスーツがみて見たい。
そんな話も会話の中に出てきました。
またいつか。冬バージョンも。
そんな機会が巡ってくるかどうかはまだわかりませんが、
ご縁がありましたら、また次の機会に。
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村上春樹さんの小説にはブルーの洋服がたくさん登場します。
そんな小説の青い洋服からインスピレーションを受けて、
【青い洋服展】を開催しようと思いました。
ウェルカムドリンクもブルーでご用意しようと思います。
素敵な展示会になる予感です!
ぜひ皆様で足をお運びくだされば嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。
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VOICE Exhibition
青い洋服展
~小確幸の森~
2018 / 8 / 4 sat ~ 6 mon
VOICE初の展示会を開催いたします。
「シンプル、繊細、美しさ」というキーワードから、
その世界観を青い洋服で表現します。
淡い水色から、青、蒼、碧、紺まで、
さまざまなブルーのワンピースを、
どうぞ会場にてご高覧ください。
ROUROU 原宿 playroom
東京都渋谷区神宮前3-27-15
HIサンロード原宿ビル
open 11:00~19:00
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足をお運びくださったみなさん、
ありがとうございました。
感謝いたします。
またいつかお会いする日まで。